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黒繊月

黒月叶真 オフィシャルウェブサイト

長編小説

第三話

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霊傷、それはヨミモリによって付けられた傷の総称。ごく一般的な傷とは異なり、力の弱い一般人では治ることはないと言われるほど。
力の強い人間、ようするに能力者と呼ばれる人間には能力の程度はあるが治すことが可能である。
また、能力者の中でも力の強い者は、傷を負うこともないという。
霊傷を治療するには、霊力を与えればよい。指先で触れるだけでも効果はあるが、一番早く治す方法は血や唾液といったものである。
例として和磨を挙げよう。
彼の霊力は歴代最高とも言われており、力を抑えていてもその量は計り知れない。そのため、彼に傷をつけるヨミモリはいないとされ、誰も霊傷を負った姿は見ていない。
彼の力の強さは触れるだけで十分な治癒効果があるのだが、依相手では唾液、もっと簡単に言えばキスを好んでしている。彼曰く、反応が面白いの一言に尽きるらしい。

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「もう! なんでこんなことになるの!!」
時刻は23時を回ろうとしている。事の始まりは約3時間前。今日も変わらないお役目だと思っていた。なのに周りにはまるで蜘蛛の子のように溢れるヨミモリ。
倒しても、倒しても一向に数が減るようには思えない。
拳を振るう。
滅する。
これをどれだけ繰り返したか。
このヨミモリたちは親玉ではない。この場にいた、滅した、ヨミモリたちはいわば子どもだった。ヨミモリに生殖機能はない。
なので子どもという表現は合っていないが、最初に現れたヨミモリに感化され、一度に複数のヨミモリが現れるのは周知されている。今回はその派生といえるだろう。だが、多すぎる。
周囲に結界が張られているが、一点に集中して攻撃をされたら破れる可能性もある。幸いにして知能はあまりないようで、目の前のもの、つまり依を追うことしか脳がないようだ。
「和磨、まだ?!」
「あと2分以内」
虚空に向け声を放てば帰ってくる声。これも力の使い方だ。関東各地で同様の現象が起こっていて、親と子は同じくらいの力を持っていて、親を見つけるのが難しいという。
現在わかっている子どもの数は20を容易に超えている。各地の情報収集と共有、捜索。これを一手に引き受けてるのが和磨たちであり、親がいる可能性が一番高い場所近辺で戦っているのが依である。
「依、見つけた。そいつらは俺のところから向かわせる能力者に任せていい。俺が案内するから向かってくれ。俺も行く」
「りょ、うかい!」
上がった呼吸を落ち着かせることなく走り出す。近場であることを願って。
第三話

20?? up

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