長編小説
第一話
「はぁ!」
高く振り上げた足は鋭く、目の前の【モノ】に吸い込まれるように当たった。そして【ソレ】は最期の力を振り絞るように叫ぶと消え、辺りは何もなかったように静寂に包まれた。
消失したこの世のものとは思えない何か。それは【ヨミモリ】と呼ばれる、悪霊のような存在。見た目は人の形や獣など様々であり、能力者にしか対処ができないのだ。
「ふぅ」
「おつかれ、依」
「和磨、あんた一番強いヤツ私に任せないでくれる?」
「依の力を信じてるんだよ。だから俺は周りに集中できる。それに複数相手にするには俺の方が向いてる……だろ?」
そう言われると何も言えないことを彼は知っている。
「で、今日の傷は?」
彼……和磨に言われて、改めて体を見た。
胴体は土埃で汚れているだけだが、腕や足の服はいくつか裂けている。
「あーあ、この服気に入ってたのに」
「依の数少ないお気に入りか」
「”数少ない”は余計。急な呼び出しじゃなければ……はぁ」
「で、怪我はしてないのか?」
「うん、大丈夫。少し切れてるかもしれない程度。打撲とかもなし」
和磨の服は乱れてさえおらず、少し拗ねたように目を逸らした依を和磨は見逃さなかった。
「でも、その服は本当に残念だったな。似合ってたのに」
「えっ? そ、そうだったかな?」
「ああ、馬子にも衣裳……って褒めてるのに殴ろうとするな」
「どこが褒めてるのよ!」
「まあまあ落ち着けって。ほら、報告しないと、な?」
「柊様、春夏冬様、お役目お疲れ様です。今回のご報告を」
「ああ。……依、お前は帰っていいぞ。その格好だと色々面倒だろ?」
「……そうする」
さみしく思いつつ、帰ろうと二人に背を向ける。
「あ、依。念のため今夜お前の部屋行く」
「来なくていい。これくらいの霊傷、大丈夫でしょう?」
「お前に何かあったらどうするんだよ。好意は黙って受け取れ。じゃあな」
そう言うと邪魔者を追い払うように、手を振る。
文句、そして今夜も会えることに喜びで心が満ちてしまうのも、彼が好きだからなのだろうか。
高く振り上げた足は鋭く、目の前の【モノ】に吸い込まれるように当たった。そして【ソレ】は最期の力を振り絞るように叫ぶと消え、辺りは何もなかったように静寂に包まれた。
消失したこの世のものとは思えない何か。それは【ヨミモリ】と呼ばれる、悪霊のような存在。見た目は人の形や獣など様々であり、能力者にしか対処ができないのだ。
「ふぅ」
「おつかれ、依」
「和磨、あんた一番強いヤツ私に任せないでくれる?」
「依の力を信じてるんだよ。だから俺は周りに集中できる。それに複数相手にするには俺の方が向いてる……だろ?」
そう言われると何も言えないことを彼は知っている。
「で、今日の傷は?」
彼……和磨に言われて、改めて体を見た。
胴体は土埃で汚れているだけだが、腕や足の服はいくつか裂けている。
「あーあ、この服気に入ってたのに」
「依の数少ないお気に入りか」
「”数少ない”は余計。急な呼び出しじゃなければ……はぁ」
「で、怪我はしてないのか?」
「うん、大丈夫。少し切れてるかもしれない程度。打撲とかもなし」
和磨の服は乱れてさえおらず、少し拗ねたように目を逸らした依を和磨は見逃さなかった。
「でも、その服は本当に残念だったな。似合ってたのに」
「えっ? そ、そうだったかな?」
「ああ、馬子にも衣裳……って褒めてるのに殴ろうとするな」
「どこが褒めてるのよ!」
「まあまあ落ち着けって。ほら、報告しないと、な?」
「柊様、春夏冬様、お役目お疲れ様です。今回のご報告を」
「ああ。……依、お前は帰っていいぞ。その格好だと色々面倒だろ?」
「……そうする」
さみしく思いつつ、帰ろうと二人に背を向ける。
「あ、依。念のため今夜お前の部屋行く」
「来なくていい。これくらいの霊傷、大丈夫でしょう?」
「お前に何かあったらどうするんだよ。好意は黙って受け取れ。じゃあな」
そう言うと邪魔者を追い払うように、手を振る。
文句、そして今夜も会えることに喜びで心が満ちてしまうのも、彼が好きだからなのだろうか。
第一話
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