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黒繊月

黒月叶真 オフィシャルウェブサイト

短編小説

炎天下と私

テレビでは梅雨入りの報道がされ、これから暑苦しい夏がやってくるのだと思うと気が滅入った。
日本の夏の暑さは異常だと思う。湿度と気温の設定間違えてないかと不安さえ抱く。もう外出するような環境ではないし、吸血鬼じゃなくても日差しは凶器だ。
そう、来る夏に対し殺意にも似た感情を抱いて、まだ夏前の梅雨の中休みの空の下を歩く。
前日の雨の影響もあり、湿度は最高潮。日中の気温もぐんぐん上がって体感温度の数字も聞きたくない。
昼間には日傘がないと相当な直射日光を浴びるのに、この日の私は慌てて家を飛び出したから忘れてしまった。そんなこともあって殺意もうなぎのぼりだ。
「あづ……」
思わず声が出た。頑張って日陰を歩こうと努力したが日陰でどうにかなるレベルじゃない。
そんな私が何故こんな天気の中外出しているのかというと、友人の誘いがあったからだ。でないとこんな天気で外出するわけがない。
自他共に認めるインドア派だしゲーマーだ。なおエンジョイ勢である。
そんなこんなで待ち合わせ場所に到着した。家から20分、過酷な旅路だった。今すぐ空調のきいた場所に行ってゆっくりしたい。
汗だく状態では体を冷やすだろうが、熱中症で倒れるのとどっちがマシだろう。
炎天下の中、友人の姿を探すが見当たらない。待ち合わせの時間を間違ったのだろうか。
「……は?」
日陰でスマートフォンを開くと通知があり、確認すると友人からだったのだが、問題は内容だ。
『ごめん! 急用ができちゃって今度埋め合わせする!!』
送られた時間は今から5分前。もう何に対しての殺意を抱いているかわからない。
このまま、また20分炎天下の中帰るかどこかで休んでから帰るか。
「フラペチーノ飲みながら、もう少し日が落ちてから帰ろ……。予定もないし」
暑さに耐えるのが厳しいと判断してから私の行動は早かった。カフェの冷房が天国のように感じ、居座ってしまったのはしかたないと思う。

炎天下と私

2023/06/27 up

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